石井智子スペイン舞踊団公演『星の王子さま~孤高の薔薇~』

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スペイン舞踊家 石井智子さんの公演『星の王子さま~孤高の薔薇~』を観てきた。

石井智子さんの幼い頃からの愛読書「星の王子さま」を舞台にしたいと長年温め続けていた構想を、パンデミックを経てやっとの想いで実現された公演。

薔薇色の衣装に身を包み、冒頭で独り、スッとライトに照らされ佇む石井さんの姿に、胸が熱くなった。

「本当に大切なものは目には見えない」

「君の薔薇が君にとって大切なものになるのは、その薔薇のために君がかけた時間があるから」

私自身も好きだったこの本の中の素敵な言葉たちは、若い頃はやはり頭の中でしか理解できていなかった。けれど、子供を育て、半世紀以上生きて来た今、その言葉の重みを実感する。まさにそれを舞踊と音楽で具現化した舞台だった。

かつてあどけない少年だった岩崎蒼生さん(石井智子さんのご長男)は、美しい若人となり、フラメンコと現代舞踊をしなやかに自由に踊る。世界を目の当たりにしていく王子さまの憂い、無邪気、素直、戸惑いの表情が沁みる。石井智子スペイン舞踊団の方々の群舞は、目にするたびに深化を感じさせる。石井智子さんのもとで研鑽し続けて来られた時間と信頼の篤さを想う。そして石井智子さんの存在感。「孤高の薔薇」として大切な人の幸せを願い、そこにいるだけで舞台のすべての瞬間がひとつとなってゆく安定感。その愛こそが舞台に関わる人たちを支えている。

蒼生さん演じる王子さまが軽やかに、まるでたっぷりと水を与えるようにカホンを叩き、智子さん演じる薔薇が瑞々しく伸びやかに成長していくシーンが印象に残っている。家族、舞踊団、ミュージシャン、スタッフ・・・、そんなふうに互いに時間を惜しみなく与え合った結晶こそが、今日のこの『星の王子さま』となった。物語と現実が重なっていた。

舞台の最初と最後に朗読された「ティアーモ」の言葉がまだ耳に残っている。

素晴らしい舞台をありがとうございます。

29日の当日券、まだ少しだけあるそうです。迷っていた方、ぜひ!

石井智子スペイン舞踊公演『星の王子さま~孤高の薔薇~』

2023年1月28日(土)12:00開演/17:00開演

    1月29日(日)14:00開演

銀座博品館劇場

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