石井智子スペイン舞踊団公演『みだれ髪』観て来ました。
美しかった! 素晴らしかった!
今回再演となるこの舞台、3年前の2月の初演も私は観ていました。
あの時はコロナ禍の真っただ中。客席数制限もあり、誰もがライブ活動の中止や延期の選択をする中で、石井智子さんがアーティストとしての矜持を持って開催を決断した舞台でした。
当時、取材させていただいた時、石井さんがコロナの不安の中で伝えてくださった言葉が忘れられません。
「芸術は人生に不可欠と改めて確信しました。
人の心を豊かにできるのは芸術なのです。
自分に出来ることは?
自分の使命は何なのか?と考え、
覚悟を決めて開催の決意をしました」
その初演は、先の見えない世界の光となるような、私たち観る人々を力づけてくれた舞台でした。
そして3年、再演となった今回の舞台は、あの苦しみを乗り越えた、愛に溢れる舞台と深化していました。
闇の中を手探りでも前進していく行動は尊いもの。さらには、その時期を乗り越えて、その踏み跡を改めて思い起こしトレースし、その意味を熟考する時、初めて当時の行為の意味が明らかになり、過去と未来をつなぐ道となって鮮やかに標されるのかも知れない、そう気づかせてくれる舞台でした。
以前、取材させていただく立場として、石井智子さんが、コロナ禍の最中、舞踊家として、舞踊団の長として、家族の中の母として、妻として、多くを背負いながら苦悩される姿も拝見していました。それでも歩みを止めることなく来られたひとつの集大成が、今回の再演に込められていました。
最初の朗読、その声には恋こそ生きる力と感じさせてくれる張りのある響きがありました。
自由に生きよ!自由に恋せよ!とソロでアレグリアスを踊る石井さんと与謝野晶子の想いが重なるようでした。
群舞は、観るたびに磨きがかかっていて、今回は特にそれを感じました。グアヒーラでは、踊団員の方々の個性が美しく浮かび上がり、楽しませていただきました。そして、個性を持ちながらも、石井智子さんのエレガントな薫陶が通底していることを感じるのです。
石井智子さんと南風野香さんのカーニャ「晶子と登美子」、品格のあるドラマティックな表現力に見惚れました。
さらには「目覚めし女たち」のアストゥリアス、まるでコールドバレエのような一糸乱れぬ洗練は、瞬きも惜しむほど見入ってしまいました。井上圭子さんと中島朋子さんのエレガントなデュエット、ひとつの響きに聴こえるカスタネット。『青鞜』創刊の時代、「山の動く日来る」の希望に満ちた力強い世界観がありました。
そして、石井智子さんはソロで、長い黒髪を振り乱しながら恋の苦しみをシギリージャで踊り、鉄幹亡き後の寂寥感をタラントに込めて踊りました。コロナ禍の死の恐怖(生命の死であり、芸術の死)を味わった時期を乗り越えたからこそ、石井さんのフラメンコはよりいっそう生命力が宿っていました。ラストの光に包まれ、最愛の夫 鉄幹のもとに旅立つシーンでは、生き抜いたこその喜びが実感となって鮮やかに伝わってきました。
真上から降り注ぐ真っ白な光は、与謝野晶子を導く光という以上に、私たちの未来に続く道を指し示す光である、そんな力を感じたのでした。
素晴らしい舞台をありがとうございます。
(2024年2月17日(土)3:00PM 鑑賞)
石井智子スペイン舞踊団公演
『みだれ髪~情熱の歌人・与謝野晶子』
2024年2月16日(金)、17日(土)、18日(日)
於:日本橋劇場
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